【観国之光 278】4000万目標に黄信号 インに頼る不安露呈 本社論説委員 内井高弘


インバウンドも大事だが、日本人に国内旅行をしてもらうのが何より重要だ(奈良市)

 政府目標の「2020年インバウンド(訪日客)4千万人」に黄信号が灯っている。韓国からのインバウンドは依然として前年割れが続き、新型コロナウイルスの発生源である中国は海外への団体旅行を禁じた。

 2019年の訪日客は約3188万2千人で、うち中国人は959万4千人、韓国人は558万4千人となっている。それぞれ、訪日客全体の約3割、2割弱を占めており、日本にとっては「得意先」でもある。

 新型肺炎で中国本土の死者数は千人を超える事態まで発展。感染拡大はまだ続きそうで、深刻さが増している。また、韓国政府は11日、自国民に向けて日本などへの渡航を自粛するよう要請した。これにより、訪日韓国人はさらに減る可能性が出てきた。

 もともとインバウンドは、海外の経済情勢や自然災害、感染症などの突発的な出来事に左右されがちで、今回の事態はインバウンド一辺倒の危うさが改めて露呈したかたちだ。

 観光業は新型肺炎で大きなダメージを受けている。政府は「観光立国」を掲げ、インバウンドの増加に力を入れてきた。であるならば、政府はダメージを小さくする効果的な対策を講じるべきだ。

 赤羽一嘉国土交通相は10日の閣議後の記者会見で、新型肺炎の感染拡大の影響について言及。その上で、「わが国のインバウンドや地域の観光産業にとって大変厳しい、大変大きな影響が出ると受け止めている。今週にも政府が取りまとめる予定の緊急対策においては必要な対策を盛り込むべく、検討を進めている」と述べ、観光業への支援策を盛り込む考えを示した。ぜひ実行してもらいたい。

 少子高齢化で日本国内を旅行する人の割合が小さくなるといわれている。それをカバーするのがインバウンドだが、前述したように市場が安定しているとは言い難い。やはり日本人に旅行をしてもらい、国内旅行市場が活性化するのが業界にとってベストだ。

 そうした中、気になる動きが出ている。旅館・ホテルに、日本人から中国人客の宿泊や予約の有無の問い合わせが増えていることだ。

 「中国人の予約が入っているか」「自分が泊まる部屋に、直前まで中国人客が泊まっていたか」といった内容だ。「予約が入っている」「数日前に泊まっていた」と回答すると予約をキャンセルする人もいるという。

 過剰ともいえる反応に旅館・ホテルも戸惑うが、「これだけ話題になっていると、心配する気持ちも分からないではない」という経営者もいる。

 急場をしのぐ政府の支援と共に、国民の冷静な判断力がいま求められている。
     

インバウンドも大事だが、日本人に国内旅行をしてもらうのが何より重要だ(奈良市)

 
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